物流DX事例:宅配アプリ刷新で“現場と顧客をつなぐ”新しい配送体験を実現
背景と課題
大手物流事業者A社では、スマートフォンを活用した宅配支援アプリを自社開発し、全国のドライバーが日々の配送業務に使用していました。
しかし、アプリが稼働から数年を経て機能追加や保守対応のたびに複雑化し、ユーザーインターフェースの統一性やレスポンス速度に課題を抱えていました。現場からは「入力に時間がかかる」「新機種で動作が不安定」「誤配時の報告フローが煩雑」といった声が寄せられ、業務効率と顧客満足の両立が難しい状況に陥っていました。
さらに、アプリ運用を担う社内体制も分散しており、開発・テスト・運用・保守の責任範囲が明確でないため、改善サイクルが遅延。
デジタル技術を活かして現場の業務負荷を軽減し、利用者の体験価値を高めることが喫緊の経営課題となっていました。
提案とソリューション
当社は、まず既存アプリのアーキテクチャと運用体制を分析し、現場ヒアリングによる業務フローのAs-Is整理を実施。
その上で、アプリの操作頻度が高い機能を中心に、UI/UXを再設計しました。ログインから配送完了報告までの操作を一貫して行えるシンプルな導線設計とし、誤操作を防ぐガイド機能や音声入力などのユーザビリティ強化を提案しました。
開発環境はAndroidネイティブとRuby on Railsによるハイブリッド体制を採用。将来的なスケール拡張を見据え、マイクロサービス構成を一部導入することで、機能単位での保守性と改修スピードを両立しました。
また、アプリ改修に合わせて当社グループ内の品質保証部門がQA体制を構築し、定期的なリグレッションテストとOSアップデート対応を継続支援。これにより、継続的な運用改善が可能なデジタル基盤を整えました。
さらに、アプリ利用データと配送実績データを統合する仕組みを構築し、管理者がリアルタイムで稼働状況を可視化できるダッシュボードを提供。これにより、現場でのボトルネック分析や稼働率最適化が可能となり、アプリが単なる業務ツールから「現場のDX基盤」へと進化しました。
導入効果
刷新後のアプリは、全国のドライバー約1万人に順次展開され、操作時間の短縮とデータ入力精度の向上を実現しました。
平均配送完了報告時間は従来比で約30%短縮され、誤配報告や再配達申請に関する問い合わせは25%減少。
また、QAチームによる定期テストとアップデート検証の仕組みが確立されたことで、リリース後の障害件数は前年度比で約40%減少しました。
現場の利便性向上に加え、配送データの一元管理により管理職がリアルタイムで状況を把握できるようになり、経営層の判断スピードも向上。アプリを通じた顧客通知機能の改善によって、再配達率も減少し、顧客満足度調査では前年対比+12ポイントの改善を記録しました。
まとめ
本プロジェクトは、単なるアプリ更新ではなく、配送業務の生産性と顧客体験を両立する物流DXの好例となりました。
既存資産を活かしながらも、運用・保守を含めた長期的な改善体制を構築した点が最大の特徴です。
当社では今後も、物流・運輸業界における現場起点のデジタル変革を支援し、「現場と経営をデータでつなぐ」次世代オペレーション基盤の構築を推進してまいります