教育DX事例：園児管理のデジタル化で保育現場の負担を軽減

全国で複数の保育園・幼稚園を運営するA社では、登園・欠席連絡や日々の連絡帳、園内での健康管理など、業務の多くが電話・紙ベースで運用されていました。
保育士は園児の対応をしながら電話応対や転記作業を行う必要があり、業務負荷が非常に高い状況でした。また、情報の共有が口頭や紙で行われるため、欠席や体調不良などの連絡が一部職員に届かないケースも発生していました。

加えて、保護者側からは「連絡のタイミングを逃す」「緊急時の確認が遅れる」といった不安の声があり、園運営の信頼性にも影響を及ぼすリスクがありました。こうした状況を受け、A社は「園と保護者のコミュニケーションを円滑化し、業務負荷を軽減するデジタル基盤の構築」を目指し、当社に相談を寄せました。

当社はまず、現場の保育士・事務スタッフ・園長へのヒアリングを実施し、登園管理、欠席連絡、連絡帳記録といった業務フローを可視化しました。
現場では業務内容が属人的になりやすく、園ごとに運用ルールが異なっていたため、まず「標準化された運用設計」を行い、それを支えるシステム構成を提案しました。

新システムでは、保護者用スマートフォンアプリ、園内タブレットアプリ、管理者向けWebシステムの3層構造を採用。
保護者はアプリから登降園や欠席連絡を簡単に送信でき、園側はリアルタイムで園児の出欠状況を把握できるようになりました。
職員同士の情報共有機能を備えることで、園全体で登園状況・健康状態・連絡事項を即時に確認可能とし、引き継ぎ漏れや連絡の遅延を防止。
また、園から保護者への一斉連絡やお知らせ配信機能を搭載し、災害・感染症発生時の迅速な情報伝達も実現しました。

さらに、運用開始後も利用データを分析し、通知タイミングやUI配置を改善。現場が直感的に操作できるよう改善サイクルを継続できる体制を整えました。

導入後、保育士が日々行っていた電話対応や紙記入の業務が削減され、事務作業時間は平均で約30％短縮されました。園児の登園・欠席状況がリアルタイムで可視化されるようになったことで、職員同士の情報共有精度が向上。
連絡ミスや記入漏れは大幅に減少し、業務の属人化も改善しました。

保護者側からは「アプリで簡単に連絡できる」「園からの情報がすぐ届く」といった評価が多く寄せられ、保護者満足度調査では前年対比で約20ポイントの上昇を確認。
園運営の透明性が高まり、自治体との連携報告業務も効率化されたことで、全体の業務品質が向上しました。

本プロジェクトは、保育現場におけるアナログ業務をデジタルに置き換えた単なるシステム導入ではなく、“園と家庭をつなぐコミュニケーションのDX”を実現した取り組みです。
現場の業務を丁寧に可視化し、運用に寄り添う設計を行ったことで、導入後も高い定着率と改善性を維持。
今後は、園児の健康データや教育記録の蓄積を活かし、教育現場全体でのデータ利活用へと発展していくことが期待されています。