販売DX事例:販売・在庫を一元管理し、現場力と顧客対応を強化
背景と課題
大手飲料メーカーグループのB社では、全国で数万人規模の販売員が地域密着型の訪問販売を行っていました。
各販売員は日々の販売記録や在庫確認、発注業務を紙や旧式アプリで行っており、入力の手間や在庫誤差、報告遅延が慢性的な課題となっていました。特に、在庫状況の共有がリアルタイムで行えず、商品補充や発注のタイミングを正確に判断できないことが業務効率を下げていました。
また、管理部門側でも、個々の販売実績や在庫データがバラバラに管理されており、エリア別・担当者別の販売動向を正確に把握できないという経営課題がありました。販売員の労働負荷を減らし、正確なデータに基づく営業判断を行うためには、現場に寄り添ったシステム改革が必要とされていました。
提案とソリューション
当社は、販売員・管理者の両視点で課題を整理し、業務プロセス全体を見直したうえで、販売・在庫を一元管理するモバイルアプリを提案しました。
アプリでは、販売記録・在庫更新・発注申請などを一画面で完結できるように設計。操作ステップを従来の半分以下に削減し、慣れないデジタル操作にも対応できるよう視認性の高いUIを採用しました。
管理者側では、各販売員の在庫推移や販売実績がリアルタイムで可視化されるようになり、店舗間・地域間での在庫バランス調整も容易に行えるようになりました。
また、アプリと基幹システムをAPIで連携し、販売データを自動集約。販売現場から経営層まで同一データを参照できるようにすることで、現場の数字を即時に経営判断に活かせる環境を構築しました。
導入後の定着を重視し、当社は利用者トレーニングとフィードバックループを組み込んだ支援体制を設計。現場の要望を反映しながら段階的に機能をアップデートする運用プロセスを提案し、アプリを“現場が育てるシステム”として定着させました。
導入効果
新アプリの導入により、販売員が日々の販売・在庫報告にかける時間は平均で約40%削減されました。
在庫精度は導入初年度で95%以上に改善し、欠品・過剰在庫の発生頻度も従来の約3分の1まで減少。管理部門では、データ入力・集計業務にかかっていた工数が大幅に削減され、月次報告書作成のスピードは約2倍に向上しました。
販売現場では「入力が簡単になった」「商品提案がしやすくなった」といった声が多く上がり、販売員のモチベーション向上にも寄与。データドリブンな営業活動が実現したことで、全体の売上高は前年同期比で約8%増加しました。
まとめ
本プロジェクトは、単なるシステムリプレイスではなく、販売員一人ひとりの業務体験を再設計した「現場起点のDX」です。
デジタル化を通じて業務効率を上げるだけでなく、データを活用して経営判断を迅速化する仕組みを整えることで、現場と本部が一体となった組織運営を実現しました。
今後は、販売データを活用した需要予測やエリア最適化、顧客アプリとの連携など、さらなる高度化を見据えています。
当社は、現場のリアルな課題を軸に据えたDX推進を通じて、クライアントの営業・流通領域における継続的な価値創出を支援していきます。