電気・電子設備の設計を担う企業、設計図からの機器抽出をAIで自動化 目視拾い出し工数とばらつきを低減
設計図からの機器抽出が目視頼りで属人化、台帳精度にばらつきが生じていた
電気・電子設備の設計を担う当該企業では、納品した設備の維持管理を支えるファシリティマネジメント(FM)業務の起点として、設計図に含まれる機器・デバイスの一覧台帳を整備する必要があった。変圧器をはじめとする多種多様なデバイスが図面上に描かれているが、その拾い出しは担当者が設計図を目視で読み取り、一件ずつ手作業で台帳に記入する方法で行われていた。
設計図は案件ごとにフォーマットが異なり、描画スタイルや記号の表現も統一されていなかった。そのため、担当者の経験や読み取りの習熟度によって抽出結果に差が生じやすく、デバイスの見落としや数量の誤記が台帳品質のばらつきにつながっていた。案件の規模が大きくなるほど図面の枚数は増え、拾い出しに要する工数は比例して膨らんだ。台帳の精度は後工程の設備維持管理計画の品質に直結するため、工数とばらつきの両面での改善が求められていた。
設計図内のデバイスをAIが自動認識・抽出し、台帳化の処理を自動化
当社はまず、対象となる設計図の種類・記号体系・デバイスの描画パターンを分析し、AI認識に適した図面群と、人手による確認が必要な例外ケースとを区分した。その上で、電気・電子設計図を入力としてデバイスを自動認識・抽出し、台帳データとして出力する処理フローを構築した。
認識エンジンは、変圧器に代表される電気・電子デバイスの図記号を学習データとして訓練し、フォーマットの異なる複数の図面スタイルに対応できるよう調整した。図面上の記号を検出するだけでなく、検出したデバイスの種別・数量・配置情報を整理して台帳フォーマットに出力する構成とし、担当者が行っていた読み取り・転記の工程を自動化した。
最終的な台帳の確認・承認は担当者が担う設計とし、AIが抽出した結果を担当者がレビューする流れを維持することで、処理精度に対する責任の所在を明確にしながら自動化を導入できる構成とした。
目視拾い出しの工数を低減し、台帳品質のばらつきも抑制
導入後、定型的な図面については設計図からのデバイス抽出・台帳化が自動処理されるようになり、担当者が費やしていた目視読み取りと手作業転記の工数を削減できた。担当者の経験や習熟度に依存していた拾い出し精度のばらつきも抑えられ、台帳品質の安定化につながった。
案件規模が大きく図面枚数が多い場合ほど自動処理の効果が顕著となり、処理能力の制約が大規模案件の受け入れを妨げにくくなった。担当者は抽出処理そのものから解放され、台帳の確認・精査・例外対応という判断が求められる業務に集中できるようになった。
まとめ
本事例は、電気・電子設計図に含まれる多種多様なデバイスの拾い出しが担当者の目視・手作業に依存し、台帳化に大きな工数とばらつきが生じていた課題に対し、AIによる自動認識・抽出を導入して改善した取り組みである。
本事例の核は、フォーマットが統一されていない実務図面を対象に、担当者の目視判断に依存していたデバイス認識をAIに置き換えつつ、最終確認を人手に残すことで品質保証の仕組みを維持した点にある。こうした「現場の判断基準や識別ルールを言語化し、AIシステムとして実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はその一連を一体で支援しており、今後も、目視・手作業への依存と属人化を課題とする企業に対し、現場の実態に根ざした支援を提供していく。