設備保全を担う企業、点検記録の正規化と3Dモデル連携を提案 設備状態の空間的把握で保全判断を支援
様式バラバラの点検記録が、設備状態の一元把握を阻む
設備保全の現場では、点検・保全記録は担当者や部門ごとに異なる様式・フォーマットで蓄積されることが多い。紙の台帳、個別のExcelシート、自由記述のテキストメモなどが混在し、記録のルールが統一されていないため、特定の設備について過去の異常履歴や処置内容を横断的に参照しようとしても、どこに何があるかを探し出す作業から始まる状態になりやすい。
加えて、図面・写真・点検記録がそれぞれ別のファイルサーバーや紙媒体で管理されているケースでは、実際の設備がどこに配置されていて、その記録がどのデータに対応するのかという対応関係が、担当者の記憶や属人的な知識に依存する。ベテラン担当者が異動・退職した際に、その対応関係が失われるリスクも内在している。
設備の劣化傾向を読み取り、予防保全の判断を下すためには、対象設備に関する時系列の点検データが構造的に整っていることが前提となる。現状の「バラバラな記録が蓄積されているだけ」の状態では、異常の予兆を定量的に評価することは難しく、担当者の経験と勘による判断に頼らざるを得ない。
記録を正規化し、デジタルツイン上に設備の状態・履歴を紐づける
当社は、点検・保全記録の正規化(構造化)と、設備の3Dモデル(デジタルツイン)への紐づけ可視化を一体で実装する取り組みを提案している(本事例は提案段階であり、実績稼働ではない)。
まず取り組みの起点となるのは、現行の点検・保全記録の棚卸しと正規化設計である。各担当者・部門が使っているフォーマット、記録項目、入力ルールを調査したうえで、「どの項目を構造化すれば保全判断に使えるデータになるか」を整理し、統一スキーマを定義する。記録の正規化とは既存データを一括変換することではなく、今後の入力を標準フォーマットに乗せるための仕組みを設計する工程である。
次に、設備の配置・構造情報を反映した3Dモデル(デジタルツイン)を構築し、正規化された点検記録と連携させる。保全担当者が3Dモデル上の設備をクリックすると、その設備に紐づいた点検日時・測定値・処置内容・関連写真が時系列で参照できる状態を目指す。図面・写真・記録が別々に管理されていた状態から、「空間+データ」として一体的に参照できる環境への転換が構想の核となる。
入力負荷の増加を抑えるため、現行の点検業務フローを大幅に変えない設計を基本とし、モバイル端末からの記録入力や既存データとのAPI連携も選択肢に含めて検討する。
保全記録の正規化と空間把握が支援する、想定される効果
想定効果として、まず設備ごとの点検・保全履歴が一元的に参照できるようになる点が挙げられる。バラバラな様式で分散していた記録が構造化されることで、特定設備の過去の異常傾向・処置内容を迅速に確認できるようになることが見込まれる。
次に、3Dモデルとの連携により、設備の物理的な配置と保全データが空間上で対応づけられる。どの設備が直近で点検されており、どの設備に未処置の異常が残っているかを、図面を別途参照することなく3Dモデル上で把握できる環境が構築される想定である。担当者の記憶や属人的な知識に依存していた「設備と記録の対応関係」が、システム上で明示的に管理される。
さらに、記録が構造化されることで、保全判断の根拠となるデータ(点検間隔・異常頻度・部位別の劣化傾向等)を定量的に集計・分析する基盤が整う見込みである。担当者の経験則に依存してきた予防保全の判断を、データの裏づけを持って行える方向に移行できると想定している。
なお、これらの効果は提案段階における想定であり、実際の改善幅は現行記録の品質・量・業務フローへの適合度によって変わるため、要件定義・PoC工程を通じて検証・調整する。
まとめ
本事例は、様式が統一されていない点検・保全記録の正規化と、設備の3Dモデル(デジタルツイン)への紐づけ可視化を提案するものである。記録を構造化し、空間情報と組み合わせることで、設備の状態・履歴を一元的かつ直感的に把握できる基盤を構築することを目指している。
この取り組みの核は、現場の保全業務の実態を踏まえた正規化スキーマの設計と、「空間上で記録を参照できる」という保全担当者の判断を支える仕組みの実装にある。属人化した記録管理や経験則に依存してきた保全判断を、構造化されたデータと空間的な可視化で支援するアプローチは、設備保全・施設管理に限らない。当社は現場の業務知識と判断基準を言語化し、それを支えるシステムの設計・実装・運用定着までを一体で支援している。今後も、記録管理の属人化や情報の分散に課題を持つ企業に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。