特殊車両を製造・保守する企業、IoTで保守部品の損耗状態を可視化 故障修理の削減と車両リピート購入20%増を実現

⏺︎ 特殊車両を製造・保守する企業 特殊車両の保守部品にIoTセンサーを導入し、損耗状態の可視化とアプリ経由の利用者ニーズ回収を実現。故障修理の削減と保守コスト約50%削減、リピート購入20%増を達成した事例
AIソリューション 製造業界
保守人材の不足と顧客接点の欠如が、修理滞留と市場ニーズの乖離を招く

粉粒体運搬車を中心に特殊車両を製造・保守するこの企業では、保守専門人材が慢性的に不足しており、車両のメンテナンスおよび修理対応が年間を通して滞留する状態が続いていた。販売店からは対応速度と品質に関する改善要望が年々積み上がり、顧客満足度の低下が現場の課題として顕在化していた。

保守体制の問題に加え、製造・開発部門が抱えるもう一つの課題が顧客との直接接点の不足だった。車両の実際の使われ方や現場の不満は販売店を経由する形でしか入ってこず、情報の鮮度も精度も担保できない状況にあった。市場ニーズに即した車両企画やサービス設計を行うための一次情報が体系的に集まる仕組みがなく、製品改善の判断が担当者の経験や勘に頼らざるを得ない面があった。

二つの課題の根底にあるのは、保守業務の反応型(事後修理型)への固定化と、製造・保守・顧客間のデータ連携の不在だった。修理要請を受けてから動く構造では、人材の少なさがそのまま対応遅延に直結する。この循環を断ち、保守体制と顧客接点の両方を同時に再設計することが求められた。

IoTによる損耗可視化とアプリ経由のニーズ回収を一体で構築

当社はまず、保守対象となる主要部品へのIoT(モノのインターネット)センサーの実装と、センサーデータを集約・可視化する基盤の設計から着手した。保守担当者が判断の根拠として参照できるよう、部品ごとの損耗状態をリアルタイムで可視化し、交換推奨タイミングを定量的に提示する仕組みを構築した。

データ収集の設計においては、特殊車両という稼働環境の厳しさ(振動・粉塵・温度変動)を考慮し、センサーの選定と取付位置の最適化を行った。収集したデータは保守管理画面に集約し、複数台の車両の状態を保守担当者が一元的に確認できる構成とした。これにより、定期点検の予約を待たずに損耗の予兆を検知し、必要な交換作業をあらかじめ計画できる体制が整った。

顧客接点の課題に対しては、車両利用者が日常的に使えるモバイルアプリを開発し、利用状況のフィードバックや要望の入力を直接受け取れるルートを設けた。アプリ経由で収集した利用者の声は、サービス改善や次期車両の企画に反映される業務フローとあわせて整備し、製品開発サイクルへの接続を可能にした。IoTによる機械データとアプリによる利用者データの両輪で、製造・保守の両部門が根拠のある意思決定を行える環境を構築している。

故障修理の削減と保守コスト約50%削減、リピート購入20%増を実現

損耗状態の可視化により、保守担当者が部品の状態を事前に把握できるようになった。定期点検の枠を消費する形で行われていた「念のための確認予約」が減少し、実際に交換や整備が必要なタイミングでの作業に絞り込めるようになった。結果として故障に至る前に対処できるケースが増え、急を要する故障修理の件数が減少した。

保守業務の重点が事後修理から予防的な整備計画へとシフトしたことで、保守コストは約50%削減した。人材が少ない中でも対応の優先度づけが可能となり、滞留していた修理対応の解消に寄与した。顧客の稼働率が安定したことで顧客満足度も向上し、販売店からの改善要望の増加傾向に歯止めがかかった。

利用者からのフィードバックを製品・サービスの改善に反映するサイクルが機能するようになり、顧客の要望が次の購入判断に結びつく流れが生まれた。車両のリピート購入は20%増加し、顧客との長期関係の形成に貢献している。

まとめ

本事例は、保守人材の不足と顧客接点の欠如という二重の課題を抱える特殊車両メーカーに対し、IoTによる保守部品の損耗可視化とモバイルアプリを介した利用者ニーズ回収を組み合わせ、反応型の保守業務を予防型に転換した取り組みである。

本事例の核は、現場の保守判断を定量データで支える仕組みと、利用者の一次情報を製品開発サイクルに接続する仕組みを一体で設計したことにある。こうした「現場の判断基準やルールを言語化し、データ収集と分析の仕組みとして実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はその一連を一体で支援しており、今後も、属人化や対応滞留を課題とする企業に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。