研究開発を担う公的機関、実験試料の申請・管理業務をデジタル化 業務工数を約6割削減
試料管理の申請・記録・確認が属人化、不慣れな担当者の誤入力と確認工数が常態化
研究開発を担う公的機関では、外部から持ち込まれる実験試料の申請受付・利用状況の記録・試験結果の管理を、Excel台帳と内製の簡易ツールを組み合わせて運用していた。システム間での一貫性は設計されておらず、入力ルールや操作手順は担当者の経験に依存していた。
不慣れな職員が申請を行う際、どの項目にどの値を入力すればよいかがツール上で判断しにくく、誤入力や記載漏れが継続的に発生していた。記録の誤りを発見するたびに担当者が過去データをさかのぼって確認・修正する作業が生じ、修正の工数が通常業務に積み重なる構造になっていた。
担当者が異動・交代するたびに運用ルールの引き継ぎに時間を要し、一部の知識は特定の担当者にしか蓄積されていない状態が続いていた。試料管理業務全体の透明性と継続性を確保することが、組織としての優先課題となっていた。
業務フロー全体の見直しとAPIによる既存システム連携でデジタル化の範囲を確定
当社はまず、試料管理に関わる関係者へのヒアリングと、現行の利用ツール・入力フローの調査・解析を実施した。どの業務工程が誤入力の温床になっているか、どの記録が他システムと重複管理されているかを整理し、ガバナンス上の観点から責任者が管理の必要可否を判断できる情報として提示した。
その上で、業務フローを抜本的に見直し、デジタル化すべき範囲とシステムに委ねる処理の境界を明確に定義した。要件定義の段階ではプロトタイプを実際の業務担当者に操作させ、入力項目の過不足・操作フローの実用性を現認しながら仕様を確定させた。
実装では、既存の業務システムとの連携を前提にシステムを構築し、試料の申請・利用状況・結果データを他システムから参照・更新できるAPIを実装した。これにより、同一データを複数のツールに手入力する二重管理の構造を解消し、申請から結果記録までの一連の流れをシステム上で自動的に処理できる環境を整えた。
業務工数を約6割削減、試料管理の標準化と引き継ぎ容易性を両立
デジタル化後、試料の申請受付・利用状況の記録・結果管理に費やしていた業務工数は約60%削減された。入力フォームに必要な項目が整理されたことで、不慣れな担当者でも操作手順に沿って誤りなく申請できる体制が整った。誤入力に起因する過去データの確認・修正作業はほぼ発生しなくなった。
他システムからAPIを通じてデータを参照できる構成となったため、担当部門をまたいだ情報連携のコストも低下した。申請の受付状況や利用履歴をリアルタイムで把握できるようになり、管理側が状況を確認するための照会業務も削減された。
業務フローがシステムに反映されたことで、担当者が変わっても標準化された手順に従って業務を遂行できる。属人化した運用ルールの引き継ぎにかかる負担も大幅に低減した。
まとめ
本事例は、Excelと内製ツールへの依存によって属人化・非効率化していた試料管理業務に対し、現行フローの解析と業務見直しを経てデジタル化の範囲を確定し、既存システムとのAPI連携により申請から結果管理までを統合した取り組みである。
本事例の核は、ツールの置き換えに先立って業務フローとガバナンスの整理を行い、「デジタル化すべき範囲」を現場の実態に即して定義した点にある。こうした「現場の判断基準・業務ルールを言語化し、それを支えるシステムとして設計・実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はその一連を一体で支援しており、今後も、属人化や運用の属人依存を課題とする組織に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。