イベント会場・商業施設の来場動向を定量把握 人物非特定型の人流解析で導線設計をデータドリブンへ
「どこに人が集まったか」の定量根拠がなく、効果測定が印象・勘に依存
展示会・イベントを運営する企業では、各ブースへの来場動向の把握を終了後のアンケートや担当者の目測に頼っていた。「あのブースは盛況だった」「導線が悪くてあのエリアは閑散としていた」という評価は出るものの、滞留時間・通過人数・混雑のピーク時刻を数値で示せる仕組みはなく、効果測定は主観と印象に依存していた。
来場者を映像で撮影・特定する手法は技術的には成立するが、個人情報の取り扱いや同意取得の負荷が大きく、実運用への導入には法務・運用の両面でハードルがあった。一方、スタッフが巡回・常駐するエリアのデータは来場者の動向と混在するため、仮に計測しても純粋な来場動向を切り出せない問題もあった。
ブース配置の見直し・導線設計・人員の適正配置を検討する際も、根拠となるデータがなく、担当者の経験則と前回比較による「勘どころ」での意思決定が続いていた。
人物を特定しない赤外線センシングとスタッフ識別子の除外で、来場者のみの流動を正確に可視化
当社は、人物を撮影・特定しない人物非特定型コンピュータビジョン(AI画像解析)と赤外線カメラを組み合わせた人流解析システムを実装した。赤外線カメラは人の輪郭と移動だけを検知するため、顔・容貌・個人の属性情報を取得せず、プライバシーへの配慮と同意取得負荷の低減を両立できる設計である。
スタッフの動きが来場者データに混入する問題には、スタッフへの識別子(ビーコン/タグ)の配布によって対処した。識別子を持つスタッフの軌跡はシステムが自動的に分離・除外し、来場者のみの流動を精度よく抽出する仕組みとした。
取得したデータは動線・滞留時間・混雑度の3軸でヒートマップと時系列グラフに変換し、ブース単位・時間帯単位での来場動向を可視化する。処理の流れは「赤外線カメラによる人の流動検知(人物非特定)→ 識別子による来場者/スタッフの分離 → 動線・滞留・混雑のヒートマップ/時系列集計 → ブース配置・導線・人員配置の改善反映」という一連のパイプラインとして構成されている。
なお、カメラの設置位置や画角の設計によっては死角が生じる可能性があるため、会場レイアウトに応じた設置計画と、識別子の配布・回収オペレーションの設計も実装の一部として含めている。
来場動向の可視化による効果測定のデータ化と、導線・配置改善への転換(想定効果)
本システムの導入により、来場者の動線・滞留時間・混雑のピーク帯が定量データとして記録されるようになる。これまで「主観・印象・口頭フィードバック」に依存していた効果測定が、数値根拠のある評価へ切り替わることが想定される。
スタッフを識別子で除外することで、来場者のみの正確な流動データが得られる。集客できていないエリアや、混雑によって来場者が離脱しやすいポイントを特定し、次回以降のブース配置・導線設計・人員配置の改善に具体的な根拠を持たせられる。
なお、本素材には実績の計測数値(削減時間・変化率等)は含まれていない。上記の効果は設計仕様に基づく想定であり、実際の効果は会場規模・設置環境・運用条件によって異なる。
まとめ
本事例は、来場者の個人特定をせずに人の流動だけを捉える赤外線センシングとAI画像解析を組み合わせ、展示会・イベント・商業施設における来場動向の定量可視化を実現した取り組みである。
本事例の核は、プライバシー配慮(人物非特定)とデータ精度(スタッフ除外)という二つの制約を設計上で解消し、導線・滞留・混雑の3軸で意思決定を支援するパイプラインを構築した点にある。こうした「現場の判断やルールを言語化し、プライバシーと精度の両立をシステムとして実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はその一連を一体で支援しており、今後も、属人化した経験則や主観依存の評価をデータドリブンへ転換したいと考える企業に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。