企業F社、FAX・紙帳票の転記をOCRで自動処理 担当者を確認・判断業務へ移行
紙とFAXの入力で、毎月の残業と人件費が継続的に増加
企業F社では、取引先や社内各部門から届く注文書・申請書の多くが紙やFAXで運用されており、担当者が帳票を確認しながら基幹システムへ手入力する業務が定常化していた。帳票の書式は送付元ごとに異なり、担当者は必要項目を探しながら入力し、入力後の確認・差し戻し・原本保管・監査時の検索まで、一連の処理をすべて手作業で対応していた。
処理量が増える繁忙期には経験のある担当者に業務が偏り、残業による対応と人為ミスの増加が繰り返されていた。ミスが発生すると差し戻しと再入力が必要になり、処理が滞留しやすい構造になっていた。
管理側でも、入力履歴の追跡や監査対応のたびに担当者への確認が必要で、締め処理の見通しが立てにくい状況が続いていた。処理量の増加に比例してコストが膨らむ構造を見直すことが、F社の課題だった。
帳票を種類ごとに仕分けし、担当者の役割を入力から確認・判断業務へ
当社はまず、F社で扱う帳票の種類・書式・処理フローを分析し、送付元ごとのばらつきを整理した。頻度が高く書式が安定している帳票から順にテンプレート化し、同じ種類の帳票を一括で自動処理できる構成に再設計した。
OCR(光学文字認識)による読み取り後のデータは、基幹システムへ直接流し込むのではなく、確認が必要な項目のみを担当者が判断する画面設計とした。担当者の役割を「全件を手入力する」から「要確認箇所だけを見て判断する」に切り替えることで、処理精度と対応速度の両立を図っている。社外に出せない情報を扱う業務のため、クローズドな環境内での運用を前提として構築した。
重視したのは「帳票処理をゼロから作り直すのではなく、現行の運用フローを活かしながら自動化できる範囲を広げる」アプローチである。担当者が行ってきた確認・例外対応・問い合わせ対応のノウハウをそのまま活かせる設計とした。
入力中心だった担当者の時間を、ミス防止や問い合わせ対応へ振り替え
導入後、定型帳票の大半を自動処理できる体制に移行し、これまで転記作業に費やしていた工数を、確認・例外対応・問い合わせ対応へ振り替えた。担当者が「処理件数をこなすこと」に追われていた状況から、「精度を保つこと」に集中できる業務環境に変わった。
繁忙期の処理量増加に対しても、増員・残業で対応する依存度が下がった。書式のばらつきが大きく自動処理が難しい帳票については人が対応する運用を維持しつつ、定型処理の比率を段階的に拡大できる構成となっている。
管理側では、紙の探索・入力履歴の追跡・監査対応の作業が軽減され、締め処理の見通しが立てやすくなった。経営にとっては、処理量が増加しても人員増加に直結しにくい体制に移行できたことが、この取り組みの主な成果である。
まとめ
本事例は、紙・FAX帳票の転記業務が現場の工数と管理コストを慢性的に圧迫していた企業に対し、帳票の書式分類・テンプレート化・確認業務への役割再設計を一体で進めた取り組みである。自動処理の範囲を段階的に広げながら、担当者のノウハウが活きる運用体制への移行を実現した。
本事例の核は、既存の運用フローを温存したまま、定型帳票から自動化の範囲を段階的に広げ、担当者のノウハウを活かしたまま移行した設計にある。既存フローを活かして段階的に自動化するこの進め方は、業種を問わず通用する。当社は、業務分析からシステム設計・導入支援・運用定着までを一体で支援しており、今後も、属人化や負荷の集中を課題とする企業に対し、業種を問わず業務実態に即した構成を提案していく。