品質改善事例:画像差分検知で検査工数を削減し、目視判定のばらつきと見落としリスクを低減
人の目に頼った検査で、作業時間も判定のばらつきも増え続けていた
製造企業K社では、製品の外観検査や設備点検を担当者が目視で実施していた。検査件数が増えるほど担当者の工数が膨らみ、繁忙期には検査工程が生産ラインのボトルネックになることがあった。担当者によって判定基準の解釈が異なるため、同じ不良でも検出される場合とされない場合があり、品質基準の均一化が課題だった。
低単価製品では検査コストが製品原価に対して大きな比率を占めており、検査精度を維持しながらコストを抑える方法が見つからない状況が続いていた。夜間点検や遠隔施設での確認など、常時人員を配置しにくい環境での品質管理にも限界があった。
見落としによるトラブルが発生した場合の二次被害リスクも考慮が必要であり、検査品質の底上げが経営上の課題となっていた。
写真を入れるだけで損傷や異常の候補をAIが抽出し、担当者は「確認と判定」だけに集中
当社はまず、K社が扱う検査対象の種類・撮影環境・判定基準を整理し、画像差分検知(撮影画像を基準画像と比較して変化箇所を自動特定する手法)による自動抽出に適した対象と、人手判断が必要なケースを切り分けた。写真を入力するだけで損傷・異常の候補箇所が自動抽出され、担当者に確認タスクとして提示される構成を実装した。
最終的な合否判定は担当者が行う設計としており、自動化による処理精度の問題が品質保証の責任に直結しない運用フローを維持している。撮影対象に人物が含まれる場合には、プライバシー保護のためのマスキング処理をオプションとして組み込んだ。製造外観検査から施設点検・インフラ巡回まで対応できる汎用性を持たせた構成としている。
検査の作業時間が減り、品質の判断基準もそろって、担当者が判断業務に集中できる体制へ
導入後、定型的な外観確認の大部分が自動処理されるようになり、担当者が全件を目視確認していた状態から、自動検知された候補を確認・判断する業務へと変わった。検査工数が大幅に削減され、繁忙期の人員配置への依存が軽減された。
判定基準が画像差分検知によって一定化されたことで、担当者間のばらつきが低減した。異常の見落としリスクが低減し、早期発見による二次被害防止に寄与している。
夜間・遠隔施設での検査も写真をもとに処理できるようになり、常時人員を配置することが難しい環境でも品質管理の水準を維持できるようになった。
まとめ
本事例は、目視検査の工数増加と判定ばらつきが品質管理の安定性を損なっていた製造企業に対し、画像差分検知による異常候補の自動抽出を導入し、担当者が判断業務に集中できる検査体制を構築した取り組みである。
本事例の核は、最終判定の責任を担当者に残しながら、撮影環境の分析・検知モデルの設計・実装・運用フロー整備までを一体で進めた設計にある。こうした「現場の判断基準やルールを言語化し、システムとして実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はその一連を一体で支援しており、今後も、検査工数の削減と品質基準の標準化を課題とする企業に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。