点検DX事例|巡回映像の自動解析で、インフラ点検の負荷を軽減
広域設備の損傷確認を、担当者が現地を歩いて目視する体制が限界に
インフラ保全事業者L社では、広域に点在する電柱や設備の損傷状況を担当者が現地へ歩いて確認する体制を長年続けていた。夜間に実施しなければならない点検作業も発生しており、担当者への負荷は高い状態だった。点検コストと人員不足が慢性的な経営課題となっており、点検の頻度を落とさざるを得ない時期もあった。
損傷の発見が遅れると、設備事故やサービス停止といった二次被害につながるリスクを抱えていた。発見の遅れを防ぐために点検頻度を維持しようとすると人員コストが膨らむというジレンマが続いており、体制の抜本的な見直しが求められていた。
車両搭載カメラによる走行撮影とAI映像解析を組み合わせた点検体制を構築
VINは、車両に搭載したカメラ(走行中に対象設備を自動撮影)とAI(人工知能)解析を組み合わせ、映像から損傷・落書き・異常を自動検知する仕組みを導入した。検知結果は優先度付きで修繕候補として一括レポートに出力される構成とし、担当者が対応順序を判断しやすい形式に整えた。導入前にカメラの設置位置・解像度・走行速度について実地検証を行い、実際の運用環境での検知精度を確保した。
検知精度の向上を目的とした現場でのパラメータ(検知モデルの調整値)調整を経て、夜間専任の点検作業が不要となる体制への移行を実現した。担当者の役割は「現地を歩いて目視する」ことから「AIの検知結果を確認して対応を判断する」ことへと変わった。
夜間専任作業の廃止と点検エリアの拡大、コストを抑えた保全体制を実現
夜間の専任点検作業が不要になり、担当者の労働負荷と点検コストが大幅に削減された。損傷の早期発見が可能となり、放置による設備事故や二次被害につながるリスクが低減した。なお、AI検知の見逃しリスクに備え、定期的に担当者によるサンプル確認をAI検知と並行して実施し、検知精度のモニタリングを継続している。修繕の優先度が可視化されたことで、対応順序の判断を根拠に基づいて行えるようになった。
同じ予算・人員のまま対応できるエリアが拡大し、点検頻度を落とさずに維持できる体制が整った。人手に依存した点検体制から、AIを活用したデータ駆動の保全管理への移行が実現した。
まとめ
本事例は、広域設備の目視点検という人手に依存した体制に対して、車両搭載カメラとAI解析を組み合わせることで点検効率と精度を同時に向上させた取り組みである。
本事例の核は、担当者による最終確認・判断の責任を残しながら、撮影から異常検知・優先度付きレポート出力までを自動処理した設計にある。こうした「現場の業務知識と判断基準を言語化し、AIや自動化システムとして実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はその一連を一体で支援しており、今後も、人手不足や点検コストの増大を課題とする企業に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。