医療DX事例:院内完結型AI音声記録で、診療後の記録負荷と入力ミスリスクを軽減

⏺︎ 医療法人H 診療記録の作成負荷を減らし、医療現場のコンプライアンスと診療効率を両立した事例
診療後の手入力記録が医師の時間を奪い、クラウドを使うのも難しかった

医療法人Hでは、医師が診療後に記憶を辿りながら電子カルテへ手入力する業務が1件あたり15〜30分を要しており、診療件数が増えるほど記録業務が医師の業務時間を圧迫していた。入力内容のばらつきも課題で、記録の一貫性が監査対応や他科連携における説明責任に影響していた。

クラウド型のAIサービスを導入しようとしても、医療情報を外部サーバーに送信することが院内規定で許可されておらず、検討自体が止まっていた経緯があった。セキュリティ要件を満たしながらAI活用を進めることが、Hの前提条件だった。

記録負荷の軽減と情報セキュリティの両立が課題として残る中、業務効率化の手が打てない状態が続いていた。

院内サーバーへのオンプレミス構成で、音声から電子カルテ下書きまでを一気通貫で自動化

当社はまず、Hの情報セキュリティ要件と院内ネットワーク環境を確認した上で、音声認識AIと記録処理システムを院内サーバーに設置するオンプレミス(院内サーバーへの自社設置型構成)を設計した。診療中の会話を音声認識で自動文字起こしし、SOAP形式(問診・評価・計画・実施の4項目で診療記録を構造化する記述フォーマット)に構造化した上で電子カルテの下書きを生成する一気通貫の処理フローを実装した。

クラウドを一切経由しない構成のため、医療情報が院内から外部へ出ることなく処理が完結する。監査対応に備えた記録ログを自動生成する機能も組み込んでおり、記録の一貫性と説明責任を担保できる設計とした。医師が行うのは生成された下書きの確認と修正のみであり、記録業務の最終判断は医師が担う運用フローを維持している。

記録作業時間の大幅削減と、監査に通用する記録品質の標準化

導入後、診療後の記録業務が「下書きの確認・修正」に変わり、1件あたりにかかる時間が大幅に削減された。診療件数が多い時間帯でも記録業務の遅延が生じにくくなり、医師が診療本来の業務に充てられる時間が増えた。

記録の構造がSOAP形式で統一されたことで、記録内容のばらつきが大幅に低減された。監査時に必要な記録ログが自動で整備されるため、事後対応の工数も軽減された。

院外への情報流出リスクを大幅に抑えながらAI活用を実現できたことで、クラウド導入が困難な医療機関においても業務効率化を前進できることを示した事例となっている。

まとめ

本事例は、クラウド利用制限というセキュリティ要件を前提としながら、診療記録の自動化による医師の業務負荷軽減と記録品質の標準化を両立した取り組みである。オンプレミス構成でのAI実装を選択することで、院内規定を変えることなく導入を実現した。

本事例の核は、医療情報を院外に出さない閉じた環境で、音声認識から記録構造化・下書き生成までを連続処理し、最終判断を医師に委ねる運用フローを設計した点にある。こうした「現場の制約条件と判断基準を前提に、業務知識をシステムとして実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はセキュリティ要件の確認から環境設計・実装・運用定着までを一体で支援しており、今後も、情報保護の要件と業務効率化の両立を検討する組織に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。