不動産DX事例|物件内覧の撮影データから間取り・設備情報を自動生成し、現地作業を大幅短縮
内覧後の記録に30分〜1時間、新人担当者の負担が特に大きかった
全国展開の不動産会社S社では、担当者が物件内覧後に間取りや設備状況をメモ・手書きスケッチをもとに整理し、Web掲載用データとして入力するまでに1件あたり30分〜1時間程度を要していた。経験のある担当者でも一定の時間がかかり、入社間もない新人担当者では1時間を超えることも珍しくなかった。
物件数が多い店舗では内覧後の記録作業が積み重なり、担当者が本来注力すべき顧客対応や営業活動の時間を圧迫していた。間取りの正確さや設備の記録粒度も担当者によってばらつきがあり、掲載データの品質を均一に保つことが課題だった。
全国規模で物件数が多いため、記録業務の効率化が個人の生産性だけでなく、組織全体の運営コストにも影響していた。
撮影データから3D間取りと設備情報を自動生成する処理パイプラインを構築
当社はまず、内覧現場での撮影の現実的な制約を確認し、担当者が動線上で撮影を完了できる撮影設計を行った。ドア位置や廊下の区切り目など固定しやすい立ち位置を撮影起点として定めることで、担当者によるばらつきを抑えながら必要なデータを取得できる手順を標準化した。
カメラとLiDAR(光検出と測距センサー)を組み合わせた撮影データをもとに、3D間取りを自動生成する処理パイプラインを実装した。LiDARによる深度情報で空間の形状を精度よく取得し、一部の寸法が不明確な箇所については実測値による補正を加える運用フローとした。撮影データからキッチン・水回り・収納などの設備情報も自動抽出し、Web掲載に必要な形式へのデータ変換まで一連の処理が自動で完了する構成とした。
担当者は撮影を行い、生成されたデータを確認・修正するだけでよく、記録作業の大部分が自動化された。
記録時間の大幅短縮と掲載データ品質の均一化を実現
導入後、内覧時の記録作業が「撮影→データ確認」の流れに変わり、従来30分〜1時間かかっていた記録作業が大幅に短縮された。新人担当者であっても撮影手順に沿って動けばデータが生成されるため、経験に関わらず同水準の記録品質を確保できるようになった。
間取り図と設備情報がWeb掲載形式のデータとして自動出力されるため、掲載までのリードタイムも短縮された。担当者が記録作業から解放された分の時間を、顧客対応や案内準備など付加価値の高い業務に充てられる体制となった。
全国展開の拠点数に対応するため、クラウド経由でデータ処理と確認ができるインフラ構成としており、店舗側での特別な環境整備なく利用できる設計とした。
まとめ
本事例は、物件内覧後の記録業務に大きな工数がかかっていた全国展開の不動産会社に対し、カメラとLiDARによる撮影データから間取り・設備情報を自動生成するシステムを構築し、現地作業の大幅な短縮と掲載データ品質の均一化を実現した取り組みである。
本事例の核は、撮影設計の標準化からデータ処理パイプラインの設計・実装・運用定着までを一体で支援し、現場担当者が使い続けられる操作性と処理精度の両立を図った設計にある。こうした「現場の判断やルールを言語化し、システムとして実装・運用定着させる」進め方は業種を問わない。当社はその一連を一体で支援しており、今後も、記録業務の属人化や品質ばらつきを課題とする企業に対し、業種を問わず現場の実態に根ざした支援を提供していく。